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大島砲台跡に残る作品

砲台跡入り口にある朱塗りの鉄塔「風位 2024-Oshima」は、穴から海を見ると、その先に神宿る島「沖ノ島」が目に映ります。そして、この作品と沖ノ島を結ぶ直線の間に他 2 作品が顔を覗かせます。




「時空の船 2024- Oshima」は海中より引き上げられ腐食した鉄塊を積み、腐食した鉄製の碇を携えています。
ムナカタ、三女神の象徴、正三角形をあしらう正三角柱「天空の記憶 2024-Oshima」 は2つの翼を持って砲台跡の中心にそびえ立っています。片側の翼は海で拾われた軍機の残骸のプロペラであり、その「負」を中和するかのように作家手打ちの鳥の翼が施されています。
沖ノ島の方向に向かい、戦時の記憶を浄化する旅をし、平和へと昇華される。
そんなプロセスをこの土地の背景に与えたのではないでしょうか。
作家の制作意図は打ち合わせた訳ではありませんが、この土地における三者三様の平和希求なのだと思います。そしてそれらが残されて、今、大島に在るという事実が必然と思えてくるのではないでしょうか。戦争のために用意されたこの場所で、戦闘・防衛の機能を失わせ、平和を願い、また自己を今を見つめる場へと変換するように、作品が作用しています。
芸術の歴史があたかも資本主義の流れに巻き取られているかのように、様々な現象を映し出して 100 年近く“市場”における価値が大きく評価されがちになっています。しかし、ここで観ることのできる作品は誰の所有でもなく、世界遺産を背景に、この場所と時間の歴史にふさわしく存在しています。
砲台跡が作られた時代の神守る島は、芸術のいく先を知っていたかのように、人間の愚行を静かに受け入れていたのかもしれません。
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